自慢ではないが、私はミーハーな人間である。 この時期にハン・ガンさんの作品を読むというのは、当然ながらノーベル賞受賞の報せがあったからであり、まんまとそれに乗せられたのだ。 正直なところ、私はあまり韓国文学というものに明るくない。というより…
私は印象派の絵画が好きである。特に敬愛しているのはルノワールで、実物を前にしたときは吸い込まれるような絵に感動を覚えたものだった。 印象派の特徴に、分割筆致と呼ばれるものがある。色は混ぜ合わせると黒に近付いていくが、隣同士に配置すると鮮やか…
私にとって初めてのルシア・ベルリンは、数年前に読んだ「掃除婦のための手引書」だった。よく言えば簡素な、悪く言えば味気ないタイトルに惹かれた。短編集で、そのほとんどが一人称で書かれたものだった。 ルシア・ベルリンは明らかに生活を切り貼りしても…
やっと秋らしくなってきたと思ったら、もう目の前には冬の気配が迫っている。最近の異常気象の所為なのか、それとも私が歳を取っただけなのか、近頃は秋というものへの感度が低い。暑い夏が終わると、気付けば寒い冬という感覚だ。昔の歌集なんかを読んでい…
滋賀には一度行ったことがある。 私の連れ合いの誕生日で、魚釣りに興味があるという彼女と一緒に釣り体験に足を運んだのだ。企画していたのは真言宗のお寺で、お坊さんと一緒に魚を釣るというなんだか罰当たりな気がしないでもない経験をした。ちなみに魚は…
かつて友人が、ミニマリズムに目覚めたことがある。 デヴィッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」が好きで、資本主義に対する反骨精神を燃やしていた友人だった。彼は部屋の中の家具の全てを捨て去り、身に着ける衣服も最小限に絞ったと言った。そして私…
F・スコット・フィッツジェラルドは失われた世代を代表する黄金の作家だった。 彼の代表作である「グレート・ギャツビー」は世代を超えて愛され、何度も映画化されている。その名はある種のダンディズムの象徴とされ、日本では男性整髪料の名として広く知ら…