羊を逃がすということ

今日ある本が明日もあるように

【書評】パーク・ライフ | 目的地を告げないまま何処までも【吉田修一】

パーク・ライフ (文春文庫) 作者:吉田 修一 文藝春秋 Amazon 吉田修一さんの「パーク・ライフ」は、私が在籍していた前職の上司が勧めてくれた本である。 正確には、勧められたのは別の作品だったが、その過程で本書の話題が上がったのだ。「公園にずっとい…

【書評】おいしいごはんが食べられますように | 弱さに対する理不尽な憧れ【高瀬隼子】

おいしいごはんが食べられますように (講談社文庫) 作者:高瀬隼子 講談社 Amazon 自分で言うのもあれだが、私は自炊をする方だと思う。でも、決して自炊が好きな訳ではない。ただ単純に外食だと高くつくから、自炊をしているに過ぎない。 現在、私は転職活動…

【書評】夢みる石 石と人のふしぎな物語 | 石の時間に耳を澄ます【徳井いつこ】

夢みる石: 石と人のふしぎな物語 作者:徳井 いつこ 創元社 Amazon 最近、石に興味がある。例えば、少し前に「石が書く」というロジェ・カイヨワさんの本を、このブログで取り上げた。こちらはその道の方には知られた本だったようで、突然ブログの来訪者が増…

【書評】夢のなかで責任がはじまる | 現実という名の救いのない悪夢【デルモア・シュワルツ】

毎回、記事を書く度に冒頭で投稿頻度の下がった言い訳をしているような気がする。なかなかどうして、最近忙しいのです。プライベートの言い訳になるが、絶賛転職中である。 特に最近は面接が佳境に入っていて、毎日のように画面に向かってつらつらと自分の人…

【書評】同志少女よ、敵を撃て | 戦争は誰の顔をしているのか【逢坂冬馬】

私は、戦争を知らない世代である。 日本に住む多くの人々は、きっとそうであろう。戦争と言えば、広島や長崎の平和学習で学び、「戦争は怖いもの」「原爆は恐ろしいもの」と、最早触れてはならない常識の範疇に書き込まれてきた世代である。事実、戦争は本当…

【書評】石が書く | 自然の戯れというよりも……【ロジェ・カイヨワ】

石への興味というものは、あまり共感を得られないのだろう。 その昔、高校の修学旅行で山口の秋芳洞に行ったことがある。所謂鍾乳洞で、つららのように垂れ下がった鍾乳石を見ることが出来る。お土産に、私は切り出した鍾乳石を買った。見目鮮やかな橙色で、…

【書評】デートピア DTOPIA | 下腹部をいたわりたくなる本……【安堂ホセ】

先日、書店に足を運んだ時、もう芥川賞の発表なのかと時間の流れを切実に感じた。つい最近、「バリ山行」や「サンショウウオの四十九日」に関する書評を書いた気がするというのに、もう次の作品が発表されている。そんな訳で、買わずにはいられなかったのが…