羊を逃がすということ

あなたの為の本が、きっと見付かる

2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

夏の読書、よだかの星

夏の読書について書こうと思った。夏で読書と言えば、矢張り読書感想文である。 読書感想文に苦労した記憶はない。元々日常的に本を読む習慣があるし、その感想を纏めるのも不得意ではなかった。だが別段、好きな課題という訳ではない。何より手間がかかる。…

ブログタイトルを変えました

業務連絡である。ブログタイトルを変更した。「羊を逃がすということ」という題で、これからも本の感想なりなんなりを続けていこうと思う。 なんとなく村上春樹臭のするタイトルだが、勿論由来はある。実はかねてより、かっちょいいブログタイトルを探してい…

家族が嫌で家を出た。そして家族が癌になった。

自慢ではないが、私は家族と仲が悪い。本当に自慢するような話ではない。 特に関係が悪いのは両親だ。理由はいろいろある。もともと夫婦仲がよくなかったとか、母親が妙な宗教に嵌っているとか、父親が旧時代的な亭主関白であるとか、学費の件で揉めたとか。…

【書評】なめらかな社会とその敵【鈴木健】

書店で本を買い求めるとき、「ジャケ買い」ならぬ「表紙買い」するのは、本読みとしての密かな楽しみである。前情報に踊らされず、パッとその場のインスピレーションで本を買う。結果として外れを引く経験を何度もしたが、不思議なもので慣れてくると自分に…

「ルックバック」を見て

https://lookback-anime.com/ 先日、「ルックバック」という映画を見た。これがもう本当に素晴らしい作品で、劇場を去った後も暫く呆然としてしまう程だった。一時間足らずの映像でここまで心揺さぶられるとは思わなかった。まさしく傑作である。 このブログ…

【書評】カフカ断片集【カフカ】

フランツ・カフカについて 私が初めてフランツ・カフカに触れたのは、高校時代の話である。当時軽音楽部に所属していた私は、自分のバンドメンバーのベース担当がカフカに似ていたので、興味を持ってかの「変身」に眼を通した。 もっとも、それまでもカフカ…

【書評】街とその不確かな壁【村上春樹】

村上春樹について その昔、シェイクスピアのある戯曲を読んだ時、そこに奇妙な違和感があることに気が付いた。前半と後半で、ある登場人物の立ち回りが違い過ぎたのだ。それも特に何の説明もなく。 恐らくは、シナリオの都合上その役割を変更せざるを得なか…

素晴らしい比喩とは、すなわちバニラのようなものである

比喩表現というのは、技巧的にはごくごく有り触れたものである。「○○のように」、「○○みたいに」という語句は日常的に発せられるものだし、例えばこの記事のタイトルも比喩になっている。とは言え良き比喩という話になると、少々首を捻りたくなる。 そもそも…

赤い林檎と孤独な檸檬

「何の為に本を読むの?」 しばしばそう訊かれる。困った。私には本を読む理由などないからだ。それは「何の為に靴を履くのか?」とか「何の為にコーヒーを飲むのか?」といった質問と同じで、そもそも私の生活には読書が組み込まれている。今更盲腸のように…