日本の作家
工場(新潮文庫) 作者:小山田浩子 新潮社 Amazon 小山田浩子さんと言えば、数年前に「穴」で芥川賞を取った方である。当時読んだ印象は、ちょっとした現実のいやらしさを書くのが上手な作家というものだった。ちょっとしたいやらしさ、というのは、具体的に…
パーク・ライフ (文春文庫) 作者:吉田 修一 文藝春秋 Amazon 吉田修一さんの「パーク・ライフ」は、私が在籍していた前職の上司が勧めてくれた本である。 正確には、勧められたのは別の作品だったが、その過程で本書の話題が上がったのだ。「公園にずっとい…
ロイヤルホストで夜まで語りたい 作者:青木 さやか,朝井 リョウ,朝比奈 秋,稲田 俊輔,上坂 あゆ美,宇垣 美里,織守 きょうや,温 又柔,古賀 及子,高橋 ユキ,似鳥 鶏,能町 みね子,平野 紗季子,ブレイディ みかこ,宮島 未奈,村瀬 秀信,柚木 麻子 朝日新聞出版 Am…
久し振りの書評である。 ここしばらく、プライベートが何かと忙しくて、ついついブログに手が伸びなかった。そうは言いつつ本は読んでいたのだけれど、小説というよりビジネス系のものが多く、このブログの趣旨にも合わないので、書くことがなかったというの…
円城塔という作家に思いをはせるとき、真っ先に連想するのは「天才」の二文字である。 思えば、私が円城塔を知ることとなった切っ掛けは、伊藤計劃というSF作家にあった。「虐殺器官」、「ハーモニー」、その他いくつかの優れた作品と「屍者の帝国」という…
先日、書店に足を運んだ時、もう芥川賞の発表なのかと時間の流れを切実に感じた。つい最近、「バリ山行」や「サンショウウオの四十九日」に関する書評を書いた気がするというのに、もう次の作品が発表されている。そんな訳で、買わずにはいられなかったのが…
もうかれこれ十年以上前になるが、私はファンタジー小説というものを読み漁っていた。 始まりは確か、イ・ヨンドの「ドラゴンラージャ」だった。ドラゴンあり、魔法あり、お喋りな魔剣や女盗賊や心優しいエルフあり、ファンタジーの魅力をみっちりと詰め込ん…
光と私語 (いぬのせなか座叢書, 3) 作者:吉田恭大 いぬのせなか座 Amazon 基本的に、文学と呼ばれるものの最大の魅力は自由である。 私がそう感じるのは、文学が閉じた行為だからだろう。聞きかじった話だが、かつて文学は声に出して読み上げるものだったと…
新型コロナウィルスとして世間を騒がせたCOVID-19は、初めは中国で発生した新型肺炎という、所謂対岸の火事としてネットニュースの片隅に掲載され、それから瞬く間に世界を覆いつくした。 当時の私は、大学時代の下宿をそのまま拠点とし、飲食業でアルバイト…
渇愛 ~頂き女子りりちゃん~ 作者:宇都宮直子 小学館 Amazon 普段、私は非常に地味な生活を送っている。通っていた大学が教育大だったからか、合コンにも参加したこともないし、相席屋やマッチングアプリなんてものに手を出したこともない。社会人としての…
おいしいごはんが食べられますように (講談社文庫) 作者:高瀬隼子 講談社 Amazon 自分で言うのもあれだが、私は自炊をする方だと思う。でも、決して自炊が好きな訳ではない。ただ単純に外食だと高くつくから、自炊をしているに過ぎない。 現在、私は転職活動…
はてさて困ったものだ。 最近、私が勤める会社の人事異動があり、パワハラ気質の上司がやって来てしまった。高圧的で労働環境を悪くするが、一部お気に入りからはカルト的人気があり、数字も出している――つまるところギリギリのラインを攻める人物であり、明…
夢みる石: 石と人のふしぎな物語 作者:徳井 いつこ 創元社 Amazon 最近、石に興味がある。例えば、少し前に「石が書く」というロジェ・カイヨワさんの本を、このブログで取り上げた。こちらはその道の方には知られた本だったようで、突然ブログの来訪者が増…
世の中には、身体の一部が結合した状態で生まれてくる子どもがいる。私は彼らのことをシャム双生児という言葉で認識していたが、本書では結合双生児という語が宛がわれる。 何でも、シャムというのは著名な結合双生児の出身地から取られた名称だそうで、近代…
起きられない朝のための短歌入門 作者:我妻俊樹,平岡直子 書肆侃侃房 Amazon 先日、新潮新人賞の結果発表があった。例に漏れず、私は応募していたのだが、今回は二次選考突破三次選考落ちという結果で終わってしまった。 新人賞に応募しているアマチュア作家…
随風 (01) 作者:宮崎智之,仲俣暁生,友田とん,早乙女ぐりこ,海猫沢めろん,オルタナ旧市街,ササキアイ,鈴木彩可,作田優,岸波龍,竹田信弥,柿内正午,横田祐美子,野口理恵,北尾修一,森見登美彦,円居挽,あをにまる,草香去来,西一六八 志学社 Amazon このブログは書…
なぜ人は自分を責めてしまうのか (ちくま新書) 作者:信田さよ子 筑摩書房 Amazon 「なぜ人は自分を責めてしまうのか」 信田さよ子さんの書かれた本書を買い求めたとき、私の念頭にあったのは前職での出来事だった。 前職を、私は人間関係が原因で辞めている…
随分長い間が空いてしまった。 12月以降、他界した伯父の後始末であったり、年末年始のごたごたであったりで、すっかり無沙汰になってしまった。気付けばクリスマスもとうに過ぎ去り、早くも新年である。皆様、明けましておめでとうございます。どうぞ今年…
死の瞬間 人はなぜ好奇心を抱くのか (朝日新書) 作者:春日 武彦 朝日新聞出版 Amazon 「死をはじめて想う。それを青春という」 そんなキャッチコピーを眼にしたことがある。確か山田風太郎さんの「人間臨終図鑑」の帯に記された言葉だったと思うが、未読かつ…
あなたに犬がそばにいた夏 作者:岡野大嗣 ナナロク社 Amazon 私は短歌が好きである。 俳句でも川柳でもなく、なぜ短歌が好きかと言うと、やはりその文量が丁度いいのだろう。俳句だと季語が入ってくるので、何かを表現するのに強い制限をかけられている気が…
「人間と大腸菌、どちらが進化した生き物だと思う?」 大学の頃、留学生の友人にこんなことを尋ねられた。当時の私は相手がそう答えさせようとしているのだなと勘繰りながらも、「人間」と答えた。私はてっきり「残念、大腸菌です」という答えが返ってくるの…
F・スコット・フィッツジェラルドは失われた世代を代表する黄金の作家だった。 彼の代表作である「グレート・ギャツビー」は世代を超えて愛され、何度も映画化されている。その名はある種のダンディズムの象徴とされ、日本では男性整髪料の名として広く知ら…
私は大阪生まれの大阪育ちだが、よく大阪っぽくないと言われる。 同じ関西人に、大阪出身であると言うと驚かれることが多い。喋りが標準語っぽい(あくまで標準語っぽいだけで、ただの大阪弁である)ところや、あまり気が強くないところが、そんなイメージを…
年の瀬が近付くと、やることがどんどんと増えていき、気付けば忙殺の日々を過ごしている……と思いきや、やっていることは転職のための勉強であったり、忘年会の徹夜カラオケであったり、実はほどほどに暇なのかもしれない。時間を無駄にすることに関しては一…
樟の窓 (短歌日記シリーズ) 作者:大辻隆弘 ふらんす堂 Amazon 初めに断っておくと、私は短歌の素人である。 それを言えば小説だって素人なのだが、少なくともそちらは読んだ冊数がある程度の力になるのではと思っている。だが歌集ともなると、まともに読んだ…
私は、戦争を知らない世代である。 日本に住む多くの人々は、きっとそうであろう。戦争と言えば、広島や長崎の平和学習で学び、「戦争は怖いもの」「原爆は恐ろしいもの」と、最早触れてはならない常識の範疇に書き込まれてきた世代である。事実、戦争は本当…
滋賀には一度行ったことがある。 私の連れ合いの誕生日で、魚釣りに興味があるという彼女と一緒に釣り体験に足を運んだのだ。企画していたのは真言宗のお寺で、お坊さんと一緒に魚を釣るというなんだか罰当たりな気がしないでもない経験をした。ちなみに魚は…