最早10月の折り返し地点、9月の振り返り記事を書くのも些か遅すぎるのではないかと思わないでもないけれど、私のポリシーとして「書評ブログが雑記ばかりではなさけない!」というものがあり、ずるずると後ろに伸びてしまった。
そんな訳で、今更のように9月の振り返りである。
今年の夏は暑かった。正直、今も夏を完全に脱し切れた感覚はない。にも拘らず、世間でのクールビズ期間は終わり、私もネクタイを首に巻いている。最早秋は感じるものではなく演じるものである。しかしそうは言っても、クーラーで涼みながら本を読むというのは気持ちのいいもので、来月の電気代を除けば良い夏の過ごし方をしたのではないだろうか。9月はそんな具合だった。
さて、読んだ本のご紹介。
我ながら少ない。近頃本職が忙しく、なかなか読む時間と体力が見付けられないのだ。一体世の人々はどうやって仕事とプライベートを両立させているのだろうと、不思議に思うばかりである。そんな限りある時間の中で、それでも読書を選ぶ方々は、全員漏れなく素敵である。読書、やっぱり最高ですね。
この月ベストのコーナーでは、その月に読んだ本の中で一番今読んでほしいと思うものを取り上げている。毎度の口上であるが、勿論それは一番優れているという意味ではなくて、ただ私が読んでほしいと思った、それだけである。独断と偏見による選書であることは言うまでもない。
今月の推しは……「サンショウウオの四十九日」である。
こちらを選んだのは、その語り口調に明らかな新規性が見られたからである。結合性双生児と呼ばれる身体を共有した主人公を語り部としたのは、圧倒的に新しい試みであり、私の知るところでは本書以外ない。ちなみに下のリンクが「サンショウウオ」の個別記事である。ネタバレはしていないので、気になった方は是非ご一読いただきたい。
【書評】「サンショウウオの四十九日」と肉体の永遠性について【朝比奈秋】 - 羊を逃がすということ (hatenablog.com)
勉強になったという意味では「理不尽な進化」とも迷ったのだけれど、月ベストという枠組みだけあって、直近に出版された「サンショウウオ」に軍配が上がった。何卒、ご容赦いただきたい。
とは言いつつも、こちらもリンクを張らせていただきたい。とても面白かったんです。
【書評】「理不尽な進化」の先にあるのは、人間か大腸菌か【吉川浩満】 - 羊を逃がすということ (hatenablog.com)
折角なので、「サンショウウオ」を読んだ次に読みたくなる本のご紹介。 まず一冊目はこちら、「アルジャーノンに花束を」。
こちら、最近書店でよく見かけるのだけれど、私自身は未読である。ただなんとなく粗筋を伝え聞いてはいて、地の文への介入が「サンショウウオ」に似ているのではないかと勝手に想像している。無論、読んでいないので分からないが、近々予定はある。購入はしていないので、画像は早川書房さんのサイトから拝借した。
次にこちら。柴崎友さんの「わたしがいなかった街で」。
柴崎さんは、私のお勧めする作家の一人である。「春の庭」で描かれた端正な描写に惹かれ、私はこちらの本を手に取った。ちなみに柴崎さんは、「春の庭」で芥川賞を取っている。良ければそちらも読んでいただきたい。
大阪弁、という方言をさらりと使いこなし、眼の前にある当たり前を丁寧に物語の中へと織り込んでいく。なんとなく、「サンショウウオ」の描こうとするものと同じ方向性にあるような気がしてのチョイスである。無論、話の主題は全く異なるので、その点は留意されたい。私が言いたいのは、飽くまで方向性の近さである。それは多分、日常への慈しみではないだろうか?
以上が9月のまとめである。最後に10月に向け、個人的な抱負を。
読書量、なんとか増やしたいですね。せめて月10冊は読みたいところ。あとは当ブログのコンテンツをバランスよく配分し、いわゆる純文学とエンタメ、ミステリ、SF等々を上手く包括できると良いですね。
『X』の方では、日々短歌を詠みまくっています。段々とその腕が上がって来たように感じます。こちらもフォロワーをめきめき増やしていきたい。
夢が広がる10月です。残暑を扇風機で誤魔化しながら……。