羊を逃がすということ

あなたの為の本が、きっと見付かる

2025-01-01から1年間の記事一覧

【書評】同志少女よ、敵を撃て | 戦争は誰の顔をしているのか【逢坂冬馬】

私は、戦争を知らない世代である。 日本に住む多くの人々は、きっとそうであろう。戦争と言えば、広島や長崎の平和学習で学び、「戦争は怖いもの」「原爆は恐ろしいもの」と、最早触れてはならない常識の範疇に書き込まれてきた世代である。事実、戦争は本当…

【書評】石が書く | 自然の戯れというよりも……【ロジェ・カイヨワ】

石への興味というものは、あまり共感を得られないのだろう。 その昔、高校の修学旅行で山口の秋芳洞に行ったことがある。所謂鍾乳洞で、つららのように垂れ下がった鍾乳石を見ることが出来る。お土産に、私は切り出した鍾乳石を買った。見目鮮やかな橙色で、…

【書評】デートピア DTOPIA | 下腹部をいたわりたくなる本……【安堂ホセ】

先日、書店に足を運んだ時、もう芥川賞の発表なのかと時間の流れを切実に感じた。つい最近、「バリ山行」や「サンショウウオの四十九日」に関する書評を書いた気がするというのに、もう次の作品が発表されている。そんな訳で、買わずにはいられなかったのが…

【書評】ファウスト | 悲劇に愛の帯を巻く【ゲーテ】

先日、ゲーテを題材にした鈴木結生さんの「ゲーテはすべてを言った」を取り上げさせてもらった。それ以来、どうしてもゲーテを読みたくなって、手近にあった文庫本を漁り始めた。そんな訳で、今回はゲーテ「ファウスト」である。 私にとって、ゲーテは思い出…

【書評】ゲーテはすべてを言った | 歴史は繰り返さないが、韻を踏む【鈴木結生】

久し振りの書評である。 ここしばらく、プライベートが何かと忙しくて、ついついブログに手が伸びなかった。そうは言いつつ本は読んでいたのだけれど、小説というよりビジネス系のものが多く、このブログの趣旨にも合わないので、書くことがなかったというの…

【雑記】これまでの話と、これからの話

書評ブログと名乗っていながら、本を読む暇がまるでなかった。言い訳をすると、仕事が忙しかったのだ。とは言え、通常業務が極端に増えたとか、そういう話ではない。転職活動やら退職の手続きとやらで、プライベートの時間が確保できなかったというのが、実…

【雑記】四十九日にエロ本を探す|故郷紀行

伯父が亡くなった。享年六〇だった。 伯父については過去に何度か記事にしているので、興味のある方はご一読いただければと思う。先日、その伯父の四十九日があった。休みを取ることが出来たので、私は故郷へと戻った。 伯父が亡くなってから、地元に戻る機…

【書評】耳に棲むもの|耳に纏わるざらついた物語【小川洋子】

随分長い間が空いてしまった。 12月以降、他界した伯父の後始末であったり、年末年始のごたごたであったりで、すっかり無沙汰になってしまった。気付けばクリスマスもとうに過ぎ去り、早くも新年である。皆様、明けましておめでとうございます。どうぞ今年…