羊を逃がすということ

あなたの為の本が、きっと見付かる

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】「百年の孤独」は如何にして孤独であったか【ガルシア=マルケス】

私と弟がまだ小さかった頃、近所の田んぼでカエルを捕ったことがある。 どうしてそんなことになったのかは覚えていないけれど、とにかく捕って捕って捕りまくった。きっと子供心に狩猟本能をそそられたのだろう。だとしても、帰る間際に逃がしてやれば良いも…

【広重 ー摺の極-】広重とモネと源氏物語【感想】

現在、大阪の天王寺にある「あべのハルカス美術館」では、「広重 -摺の極-」という展示が催されている。広重とは無論、「東海道五十三次」で有名な、あの歌川広重である。今回はその展示に行ってきたので、簡単に感想を纏めたい。 私が美術というものに関…

半身で読んで、半身で詠んで

業務連絡です。ブログのアカウント名を「いこみき」とし、Xも始めました。 「自分の好きなものをもっと多くの人に愛してもらいたい」、そんな動機で私はこのブログを始めた。私は本が好きだが、残念ながら昨今、出版業は斜陽産業と言われている。私の友人で…

【書評】月ぬ走いや、馬ぬ走い【豊永浩平】

方言は、一つの武器である。 それは標準語によるテキストが溢れかえり、ともすればあらゆる表現が均一化されるなかで、ある種の本音を担保するものとして機能するからである。しかしこれをコントロールするのは難しい。 私は大阪出身なので、普段は大阪弁を…

下鴨納涼古本まつりは畳の香りがする

高野川と鴨川に挟まれた三角地帯に位置する下鴨神社。京都に由緒正しき神社は山ほどあれど、中でも下鴨神社は平安以前から存在する屈指の大神社である。縁結びを始め様々な御神徳を得るべく、年間多くの参拝客が訪れるが、盆の時期に古本市が開かれているこ…

【書評】バリ山行【松永K三蔵】

大学の頃、お世話になった教授が登山好きだった。 何かとゼミでも登山が企画され、私はそれに付き合って(半ば強制的に)山に登る経験を得た。私は理系の学部に所属していて、実験室では様々な器具を扱った。実験中にそれらの器具を破損してしまった場合、う…

【書評】ザリガニの鳴くところ【ディーリア・オーエンズ】

話題になった頃に買ったものの、読むタイミングを逃し続けていた本である。先日Netflixで映画化作品の一部を見掛け、読んでみようという気になった。厚めの本であるが、読み始めるとぐんぐん吸い込まれるようにページが進んだ。 帯に書かれた販促用の文言は…

【書評】きりぎりす【太宰治】

キリギリスが怖かった。 虫全般苦手であるが、大半に抱く感情は恐怖ではなく不快感である。ところが、キリギリスという昆虫は怖い。特にその顔が怖いのだ。 その顔、まずは面長である。おたふく顔のような受け口でありながら、極端に小さな目がアンバランス…