羊を逃がすということ

あなたの為の本が、きっと見付かる

2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】「愛するということ」、そして本当の自分を生きるということ【エーリッヒ・フロム】

愛というのは、極めて扱い難い観念である。 その原因は、主にハリウッドとディズニーの所為であると、私は思っている。そこから派生する形で巷に広がった様々なフィクションも、残念ながらその傾向に拍車をかけたと言わざるを得ない。 そうは言っても、私は…

【書評】中秋の名月も過ぎたが、「ムーンシャイン」【円城塔】

円城塔という作家に思いをはせるとき、真っ先に連想するのは「天才」の二文字である。 思えば、私が円城塔を知ることとなった切っ掛けは、伊藤計劃というSF作家にあった。「虐殺器官」、「ハーモニー」、その他いくつかの優れた作品と「屍者の帝国」という…

【書評】「サンショウウオの四十九日」と肉体の永遠性について【朝比奈秋】

世の中には、身体の一部が結合した状態で生まれてくる子どもがいる。私は彼らのことをシャム双生児という言葉で認識していたが、本書では結合双生児という語が宛がわれる。 何でも、シャムというのは著名な結合双生児の出身地から取られた名称だそうで、近代…

【雑記】8月に読んだ中で、今一番読んでほしい本

遅きに失した感があるが、8月のまとめ記事である。 8月は私の本職が繁忙期に当たるので、なかなか慌ただしい日々だった。ブログの執筆ペースを落とさず続けられているのも、偏に読んで下さる皆様のお陰である。スターは勿論、ブログ村へのアクセスやランキ…

【書評】「理不尽な進化」の先にあるのは、人間か大腸菌か【吉川浩満】

「人間と大腸菌、どちらが進化した生き物だと思う?」 大学の頃、留学生の友人にこんなことを尋ねられた。当時の私は相手がそう答えさせようとしているのだなと勘繰りながらも、「人間」と答えた。私はてっきり「残念、大腸菌です」という答えが返ってくるの…

【書評】「ツミデミック」とパンデミックの受容について【一穂ミチ】

新型コロナウィルスとして世間を騒がせたCOVID-19は、初めは中国で発生した新型肺炎という、所謂対岸の火事としてネットニュースの片隅に掲載され、それから瞬く間に世界を覆いつくした。 当時の私は、大学時代の下宿をそのまま拠点とし、飲食業でアルバイト…