羊を逃がすということ

あなたの為の本が、きっと見付かる

2024-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】ウォールデン 森の生活|人類の目的に対する問い掛け【ヘンリー・D・ソロー】

かつて友人が、ミニマリズムに目覚めたことがある。 デヴィッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」が好きで、資本主義に対する反骨精神を燃やしていた友人だった。彼は部屋の中の家具の全てを捨て去り、身に着ける衣服も最小限に絞ったと言った。そして私…

【書評】平熱のまま、この世界に熱狂したい|弱き者の握る、櫂の力強さ【宮崎智之】

F・スコット・フィッツジェラルドは失われた世代を代表する黄金の作家だった。 彼の代表作である「グレート・ギャツビー」は世代を超えて愛され、何度も映画化されている。その名はある種のダンディズムの象徴とされ、日本では男性整髪料の名として広く知ら…

【書評】決定版カフカ短編集|外的な不条理と感傷の不在について【フランツ・カフカ】

初めて読んだカフカは、新潮社から出ている「変身」だった。世の中の多くの人がそうではないだろうか? あれは高校生のときで、私は軽音楽部に所属していた。ロックバンドという響きに憧れ、大きな声で叫ばれた言葉こそ真実だと思い込んでいた。そこで組んで…

【書評】「レーエンデ国物語」ファンタジーが世界を創造する【多崎礼】

もうかれこれ十年以上前になるが、私はファンタジー小説というものを読み漁っていた。 始まりは確か、イ・ヨンドの「ドラゴンラージャ」だった。ドラゴンあり、魔法あり、お喋りな魔剣や女盗賊や心優しいエルフあり、ファンタジーの魅力をみっちりと詰め込ん…

【月ベスト】9月に読んだ本で、今一番読んでほしい本

最早10月の折り返し地点、9月の振り返り記事を書くのも些か遅すぎるのではないかと思わないでもないけれど、私のポリシーとして「書評ブログが雑記ばかりではなさけない!」というものがあり、ずるずると後ろに伸びてしまった。 そんな訳で、今更のように9月…

【書評】「逃げ上手の若君」を見る、そして「太平記」を読む

10月に入り、漸く秋らしい気候になってきた。季節を感じさせるものは、何も気温や年間行事だけではない。夏アニメの終わりもまた、世の移り変わりを示す鏡である。 今年の夏、私が最も楽しみにしていたアニメは「逃げ上手の若君」だった。原作は松井優征さん…

【書評】『「性格が悪い」とはどういうことか――ダークサイドの心理学』【小塩真司】

はてさて困ったものだ。 最近、私が勤める会社の人事異動があり、パワハラ気質の上司がやって来てしまった。高圧的で労働環境を悪くするが、一部お気に入りからはカルト的人気があり、数字も出している――つまるところギリギリのラインを攻める人物であり、明…

【雑記】短歌を詠んでいますという話

短歌というものを始めたのは、とにかくブログの宣伝をしたいが為であった。 『X』でアカウントを作ったとき、何かしら人目について、かつ文学的な内容を簡潔に表現できるものを探そうと思って、思い付いたのがそれだったのだ。動機としてはかなり不純な部類…